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最高裁判所第一小法廷 昭和50年(オ)704号 判決 1977年3月31日

主文

理由

上告代理人廬原常一、同葉山岳夫、同田村公一の上告理由第一点について

原判決は、措辞妥当を欠いてはいるが、要するに、上告人の請求のうち、原審における拡張部分については、その請求を棄却し、第一審以来維持されている部分については、第一審判決中これを認容した部分を取り消して、その請求を棄却したうえ、第一審判決中その余の上告人勝訴部分が訴の取下により失効した旨を宣言したものであり、かつ、上告人の被上告人宮島たか及び同宮島君子に対する原判決末尾添付目録(一)、(ロ)記載の建物部分の明渡請求についても、これを認容した第一審判決を取り消して、上告人の請求を棄却したものと解せられる。そして、請求の減縮は、特段の事情のない限り、その取下と解すべきところ、本件の場合、右特段の事情があることをうかがわせる資料はなく、記録によると、被上告人らは、上告人の訴の変更に異議がない旨を陳述することによつて訴の取下にも同意を与えたか、又は民訴法二三六条六項所定の期間内に異議を述べなかつたことにより訴の取下に同意したものとみなされたことが明らかであるから、上告人のした請求の減縮は訴の取下にあたり、右訴の取下は適法にその効力を生じて、第一審判決は右取下の限度において失効したものというべきである。所論引用の判例は、訴の変更に相手方が異議を述べた事案に関するものであつて、本件に適切でない。それゆえ、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

同第二点ないし第四点について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

同第五点について

土地賃借権の準共有者の一人である甲は、賃借土地を使用占有している他の準共有者乙又は転借人丙に対し、当然には右土地の明渡を求めることは許されないのであり、また、貸主である土地所有者丁との関係では甲のみが借主となつていて、乙及び丙はその占有権原を丁に対抗することができない場合に、甲は、丁の土地所有権を代位行使して、乙及び丙に対し右土地の明渡を求めることもまた許されないものと解するのが相当である。それゆえ、原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、上告人の本件土地に関する請求を棄却した原審の判断は、結論において正当として是認することができ、論旨は採用することができない。

同第六点について

原判決理由説示によれば、所論の各説示が互に矛盾するものでないことは明らかであり、原判決に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原判決を正解しないでこれを論難するものにすぎず、採用することができない。

同第七点について

所論の点に関する原審の認定判断は、記録にあらわれた本件訴訟の経過及び原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。それゆえ、論旨は採用することができない。

(裁判長裁判官 下田武三 裁判官 岸 盛一 裁判官 岸上康夫 裁判官 団藤重光)

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